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わが家の境に塀は要るか

2011.11.18

「向こうの空き地に囲いが出来たんだってネエ」「ヘエー」である。落語で有名な会話だが、落語の舞台の江戸の長屋地帯は本当は塀とは縁遠かった。長屋地帯に塀なんかなかったはずだ。ドブ板が並ぶ路地に直接面して棟割り長屋は建っていた。塀があるってことは、家と塀の間に少なくとも二、三尺の空き地があるってことになるが、寸土も惜しい下町の密集地帯でそんな余裕があるはずがない。現在、東京の下町らしい下町として知られる佃や月島の長屋を見にゆくと、まれに塀のある例もないではないが、おそらく、戦後、それも高度成長期以後だろう。

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長屋の路地に植木鉢が並び、子供が駆け回っているような今日よく見る光景も比較的新しい伝統で、それ以前の長屋が本当に長屋らしかった頃には、路地は長屋の居職(家で手仕事をする職人)が半製品を干したりする貴重な空間で、植木鉢を置いたり子供が駆け回るようなゆとりはなかった。長屋どころか表通りに店を張る大きな商家だって、道に直接面しているわけで、塀はない。あっても、裏庭の隣家との境とか、目立たないところにかぎられる。私が塀という存在に関心を持つようになったのは、現在、東京の西郊の住宅地に住んでいるのだが、あまりに塀が目立ちすぎて、腹立たしいからだ。近年のミニ開発を見ると、家と塀の間に一尺ほどの土地もないのに、塀があって門柱が立つ。それも安っぽいブロック塀が多い。庭があるならともかく、庭もないのに塀が家の外側をグルリと巡っている姿を眺めていると、悲しくなる。そこまでして塀を作りたいからには、日本の郊外住宅の住人にはなにか心理的な強迫観念でもあるんじゃないかと疑わざるをえない。