父親が死んだとき、父親名義の自宅を、母親と子どもの共有という形で相続することがよくあります。ところが、その共有者である娘が嫁に行くことになり、それをきっかけに自宅の買い換えを計画したような場合、その時期によって、娘にかかる税金に大幅な違いが出てくることをご存知でしょうか。たとえば、五年ほどまえのことですが。私が行きつけの飲み屋で、ときどき顔をあわせていた小学校の先生が亡くなりました。四〇年近くも、下町の小学校で教鞭をとっていた熱心な先生でしたが、奥さんと二人の子どもに残された遺産は、小さな自宅とその敷地だけでした。
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この土地・家屋を、三人の遺族が持ち分をそれぞれ三分の一ずつの共有として相続したのですが、その後、娘さんが結婚したのをきっかけに、この土地・家屋を処分する話がもちあがりました。しかし、何となく決心がつかないまま、二年以上が経過、やっと話が具体的になり、六〇〇〇万円で買いたいという人が現われたところで、私に相談があったのです。遺族が心配したのは、売った利益のうち、結婚して家を出ている娘さんの持ち分に相当する部分について、かなりの税金がかかってくるのではないかということでした。たしかに、居住用財産の三〇〇〇万円特別控除は、たとえ共同所有者であっても、同居していない人には適用されません。したがって、原則どおりに課税されるとすれば、娘さんの場合、ざっと計算しただけでも四四二万円の税負担になります。この話を聞いて、私はすぐ娘さんが結婚した日を確かめました。そして、この計画をなるべく早くすすめ、年内に売買契約をすませるようアドバイスしたのです。というのは、所有者が現に住んでいない家でも、住まなくなった日から三年を経過した日の属する年の一二月三一日までに売れば、特例の適用が受けられるという規定があり、その規定は娘が嫁に行った場合にもあてはまるからです。四四二万円払うか、まったく払わなくてすむかが、ここできまるのです。