ガラスの歴史は遠く古王国時代、紀元前二七世紀から二二世紀頃のエジプトで、ガラス玉がつくられていたという説にまで遡る。遺跡からの出土品をもとに、これらの主張はなされているわけだが、いやそうではなく、ガラス技術をひろめたのはメソポタミアだから、起源もそうなのだと主張する説もあり、真偽のほどは定かではない。確かにメソポタミアでは紀元前一八世紀に最初のガラス容器が誕生している。それらのガラスはどれも不透明なものであり、色も青緑、黄、白など六色ほどに限定されていた。
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いまでいうような透明ガラスに近いものは、アッシリア時代の終わり頃に生まれている。以来、ガラスは工芸の分野に限らず、建築素材としても大きな役割を果たしてきた。いまやガラスなしに建築表現を語るのは難しいが、通常のように外光を取り入れるだけでない、新しい象徴性をも併せ持つガラスの表現も登場しつつある。たとえば二〇〇一年一〇月に、東京・六本木に完成した「NEWTOKYOLIFESTYLEROPPONGTITHINKZONE」がその一つである。設計は吉岡徳仁で、建物はZONE六本木ビルの一階にあるが、ビルの隣は大規模な都市再開発「六本木ヒルズ」の工事現場であって、いわば典型的な近未来都市に隣接するかたちでこの吉岡の作品はつくられている。施設の中身はギャラリーやカフェなどだが、ここで興味を引くのは六本木通りに向いたガラス面のありようだ。というのもそのガラス面には、特殊な仕掛けが施されていて、室内から外を眺めると、前面の高架道路や建物がまるで粉々に砕かれたように映るからである。そこでは実像としての都市と虚像としての都市が、ガラスの上で複雑に折り重なっている。